【書評】私たちは子どもに何ができるのか
非認知能力と呼ばれる、やり抜く力、好奇心、自制心。
それらを育てるために私たち大人ができることは何か?
そんな問いへの手助けとなる一冊、
『私たちは子どもに何ができるのか』を読みました。
注目の非認知能力とは?
読み書き計算など、IQで測れる能力を認知能力と呼びます。
対する非認知能力とは、目標達成まで粘り強くがんばる力や、他人との協調性、感情のコントロールができる能力のことを言います。
非認知能力が高いことが将来の経済的な安定や幸福に繋がるとして、近年注目されています。
参考:世界で注目される非認知的能力って? | 子育てに役立つ情報満載【すくコム】 | NHKエデュケーショナル
非認知能力を育てる3つのキーワード
非認知能力を育てるのに重要な要素は心理学用語でいうところの
「内発的動機づけ」です。
評価、賞罰、強制などの外発的動機づけによって引き起こされる行動に対して
内発的動機づけは自分の内側から湧き出た興味や意欲に従った行動です。
これに関連する 興味深い実験が載っていましたので引用します。
2つのグループに3日間パズルを解かせる実験がありました。
一方のグループには報酬も何もなしにパズルを解いてもらいます。
もう一方のグループには2日目にパズルを一つ完成させるごとに報酬を与えました。
3日間の実験結果では、
報酬なしのグループの方は単純にパズルが楽しいからと、だんだんとパズルを完成させるスピードが速くなっていきました。
一方、報酬ありのグループの方は2日目に報酬がもらえると分かるとパズルを解くスピードが上がったものの、3日目に報酬が出ないと分かるとその意欲がぐんと下がってしまったというのです。
報酬があるとそれが「仕事化」して、「報酬が出ないならやらない」となってしまうんですね。
自主的にやろうとする能力を育てるには、報酬のような外発的動機づけはあまり意味がないということが分かります。
では、内発的動機づけを育てるためにはどうしたら良いか?
重要な3つのキーワードが
- 有能感
- 自律性
- 関係性
です。
有能感は「自分にはできる」という自信に置き換えられます。
この時、簡単すぎるタスクではなく、ちょっと難しいけど頑張ればできるくらいのタスクをこなすことで有能感が育っていきます。
頑張って出来た!という小さな自信を積み重ねていくことで、未知の分野へも思い切って挑戦できるようになることも書かれています。
自律性は自分で選んで自分の意志でやっているという感覚を持つことです。
「宿題やりなさい!」と言われても中々やる気が起きませんが、
毎朝犬の散歩に行く!と自分で決めた習慣なんかは意外と長続きしませんか?
自分で決めたこと・選んだことは、その選択に責任を持ちたくなる、という人間の心理も働いている気がします。
関係性はこの場所にいて良いんだ、自分には価値がある、尊重されていると、周囲との関係に安心感を持つことです。
これがないと、いつ自分は追い出されるか分からない、自分はここにいてはダメなのかと、常にビクビクしながら生活をすることになり、非認知能力どころではありません。
これらの3つのキーワードを意識して伸ばしてあげるようにすることが、非認知能力の向上に繋がるということのようです。
貧困は自己責任?!
脱線しますが、ちょっとショックな調査結果のお話を。
「自力で生きていけない貧しい人の面倒を国や政府で見るべきか?」
という世界の調査で「そう思わない」と答えた人の割合は
中国で9%、イギリスで8%、ドイツでは7%だけだったそうです。
それに対し、子どもの約半数が貧困層であるアメリカでは28%。
そして何と日本人の38%は貧困は自己責任だと考えているそうです。
責任も持てない子どもを自己責任と言って突き放すのかと思うと残念でなりません。
このままでは日本もアメリカのように貧困の連鎖が止まらず、格差が広がり、本来活躍できたであろう子どもという資源を有効に活用できなくなってしまします。
それを防ぐためにも私たち大人一人ひとりが子どもを取り巻く状況に目を向けなければならないのです。
非認知能力の育成は多額のお金をかけずともできること。
本書によれば普段の行いにちょっとひと手間加えるだけでも子どもは大きく変わるそうです。
それはちゃんと目を合わせたり、話を聞いてあげたりといったことです。
それくらいなら誰だってできそうじゃないですか。
明日からと言わず、今すぐ子どもへの接し方を振り返り、明るい未来の扉を開ける手助けをしようじゃありませんか。
まとめ
非認知能力を育てるための3つのキーワード
- 有能感
- 自律性
- 関係性
これらを意識して普段の行動にちょっと手を加えるだけで子どもは随分変わるそうです。
私もこれを読んですぐから、子どもの話をこれまではなぁなぁで過ごしていた部分がありましたが、ちゃんと聞くようにしました。
親としては疲れますけど、これも子どもの非認知能力を育てるのには必要なことと思い、無理のない範囲で続けていこうと思います。
本書のネガティブな見方としては、
本書はどんな子どもでも接し方次第で変わることができる!
という主張がメインで、
裕福な家庭ではなかったり、恵まれた環境にない人にも勇気を与える内容になっています。
一方、遺伝の要素などは加味されておらず、残酷な事実をあえて見せないようにしている感じも見受けられました。
それを差し引いても、私たちの育児に活かせる点は多いと思います。
参考になった部分だけでも実践することは悪いことではないと思うので、是非読んでみてくださいね!
メンタリストDaiGoさんのオススメ書籍、『私たちは子どもに何ができるのか』でした!
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