【書評】成功する子 失敗する子 何がその後の人生を決めるのか
『私たちは子どもに何ができるのか』
の著者ポール・タフさんの別の著書
『成功する子 失敗する子』を読みました。
自制心・やり抜く力・好奇心などの
「非認知スキル」を伸ばすための研究をもとに
親が子どもにできる本当に大切なことを教えてくれる本です。
特に幼少期から知っておいた方がいいことが沢山つまっています。
人生における「成功」とは何か? 好奇心に満ち、どんな困難にも負けず、 なによりも「幸せ」をつかむために、 子どもたちはどんな力を身につければいいのだろう? 神経科学、経済学、心理学…… 最新科学から導き出された一つの「答え」とは――? (Amazon内容紹介より)
成功とは?
現代のような「知能至上主義」社会では
「成功」とは認知的スキル、読み書きや計算ができることをいいます。
これを身につけるには出来るだけ早くから公文や知育の教材を与えることで一定の効果があります。
しかしここ数年、多くの専門家たちは
知能至上主義に疑問を投げかけはじめました。
子どもの発達に最も重要なのは、
粘り強さや自制心、好奇心、誠実さ、やり抜く力、自信などを伸ばせるために手を貸せるかどうかだというのです。
これを非認知スキルといい、早期のつめこみ教育では 身につけるのが難しいことが分かりました。
親はなにができる?
避けたいのは慢性的なストレス
子どもの非認知スキルを育てたいなら避けるべきは
慢性的なストレスです。
トラウマや逆境によるストレスが何度も、または継続的に繰り返されることで
自分をコントロールする脳の一部が大きく影響を受けることが分かりました。
さらにこの影響がいちばん敏感にでるのが幼少期です。
幼少期にトラウマやストレスを感じることが
その子の非認知スキルの成長を妨げるようです。
小さな失敗を経験させる
反対に、子どもにやってあげたいこととして
小さな失敗を経験させることが挙げられています。
やり抜く力や自制心は失敗をとおして手に入れるしかないというのです。
全くその通りで、子どもが失敗しないようにと先回りして失敗を防ぐ親のことを「ヘリコプターペアレント」と揶揄しています。
(子どもの上空をうろうろしてサッと手を出すかららしい)
難しいのは愛情をかけることよりも
子どもに見合った逆境を一人で乗り越えられるようにサポートすることだと言います。
親ならつい手を出したくなりますが「この子にはできる」と信じて時には手を貸さないことも必要なんですね。
ただしそれも親子の愛着がきちんと形成されていなければ突き放しと同じですので
愛情+見守りのセットで意識しておくのが良いでしょう。
情報が少し古い点も
本書の中では有名な「マシュマロ実験」について触れられていて
マシュマロを食べなかった子には自制心があると解説しています。
現在ではこれは単に子どもの自制心だけの結果ではなく
家が裕福(マシュマロなんていつでも食べられる)
親が誠実(親がよく嘘をつくなら今食べちゃおう)
などが影響していることが追試験で分かっています。
本書の初版は2013年であり、まだ追試がされていない時です。
この部分については自分で内容のアップデートをする必要があります。
また、子どもの能力はほぼ遺伝で決まるという説も研究で分かっています。
著者のポール・タフさんは貧困と子どもについて研究されている方なので、その事実に屈しない論証を上げて話を展開されているので多少の肩入れ感は否めません。
ただし、単純に「貧困からでも成功できる」とやみくも言っているわけではなく、
「貧困層の子どもでも最適な育て方をすれば成功できる」と信じてあらゆる学校の取り組みを紹介されているので、そこは勉強になりますし、励みになります。
〈/br〉 わが家も富裕層ではありませんので 「子どもの運命は変えられない」 と言われると途方に暮れてしまいます。
そんな中でも自分たちにできることを、精一杯やってあげたい。
親なら誰しもそんな気持ちを持っているのではないでしょうか。
〈/br〉 ポール・タフさんの研究はそんな親の気持ちに寄り添う形でも社会に大きな意味をもたらしてくれます。
『成功する子 失敗する子』 まとめ
子どもの非認知スキルを伸ばすには
トラウマ、ストレスから可能な限り子どもを守ること
親と安定した愛情深い関係を築くこと
これが成功の秘訣のすべてではありませんが、大きな一部です。
アメリカの本らしくあらゆる研究の結果をもとに導きだされた結論ですので
教育者が頭の中で考えた理想論とは深さが違います。
アメリカでベストセラーになったのもうなずけます。
ストレートなタイトルとは裏腹にしっかりとした内容でした。
多少読むのに時間がかかりましたが、時間をかけてでも読む価値のある本です。
普段の育児に活かせる点も多いので、ぜひ読んでみてくださいね!
【合わせて読みたい】 tomodaruma.hatenablog.com